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読書の整理、覚え書き

国際レジームと我が国の法体系について

http://www.cistec.or.jp/export/yukan_kiso/kokusairejimes/200705-yk1.html

CISTEC 一般財団法人安全保障貿易情報センター


輸出管理の基礎

国際レジームと我が国の法体系について

  1. 安全保障貿易管理の背景
     安全保障貿易管理は、国際的な平和及び安全の維持を目的としており、武器そのものの他、高性能な工作機械や生物兵器の原料となる細菌など、軍事的に転用されるおそれのある物が、大量破壊兵器の開発者やテロリスト集団など、懸念活動を行うおそれのある者に渡ることを防ぐために貨物の輸出や技術の提供等を管理しております。
     大量破壊兵器による脅威は非常に身近な問題となりつつあり、先進国の有する高度な機械や技術が、大量破壊兵器を開発している国やテロリストグループに渡った場合、国際的な脅威となり、情勢の不安定化を招きます。例えば、生物・化学兵器は、比較的安価で製造が容易であり、製造に必要な物資・機材・技術の多くが軍民両用であるため、偽装も容易です。脅威を未然に防止するために先進国を中心とした枠組みを作り、身近な問題として貿易管理に取り組む必要があります。
     大量破壊兵器に関連する主な事件と民生品が懸念用途に転用される可能性について(例)
    1. 地下鉄サリン事件(1995/3/20)
    2. ② 米国同時多発テロの衝撃(2001/9/11)
    3. ③ 米国の炭疽菌事件(2001/9/27)
    4. ④スペイン列車爆破事件(2004/3/11)
    5. ロンドン地下鉄・バス爆破(2005/7/7)
    6. 北朝鮮ミサイル発射(2006/7/5、2009/4~10月)
    7. ⑦ムンバイ同時テロ (2008/11/26)
    8. ⑧モスクワ地下鉄連続テロ(2010/3/29)
    民生品が懸念用途に転用される可能性について(例)
      懸念用途 民生用途
    炭素繊維 ミサイル構造部材 ゴルフクラブシャフト
    冷凍凍結乾燥器 生物兵器となる
    細菌を保存
    インスタントコーヒー
    トリエタノールアミン 化学兵器 シャンプー
    工作機械 ウラン濃縮用遠
    心分離機の製造
    自動車の製造
  2. 国際レジームについて
     安全保障貿易管理に係わる国際的な枠組みとしては、国際条約と国際輸出管理レジームがあり、各国が協力し安全保障貿易管理に関する取り決めをおこなっています。

     また、安全保障貿易管理をめぐる首脳レベルの合意事項として、各国首脳間でもテロ対策・安全保障問題は、大きな懸案と認識されています。
    *安全保障貿易管理をめぐる主な合意事項等
    • 国連安保理決議第1540号(2004年4月)
      • 大量破壊兵器の開発等を試みる非国家主体にする支援等の差し控え
      • 大量破壊兵器の関連物資等に対する国内管理を確立するための効果的な措置の実施等
    • ○G8首脳会合(シーアイランド)(2004年6月)「不拡散に関するG8行動計画」
      • 大量破壊兵器及び物資に対するグローバル・パートナーシップ
      • 北朝鮮及びイランにおける核不拡散の課題への対処等
    • ○G8首脳会合(グレーンイーグルズ)(2005年7月)「不拡散に関するG8首脳声明」
      • 不拡散体制の普遍化及び強化
      • 2005年NPT運用会議等
    • ○G8首脳会合(サンクトペテルブルグ)(2006年7月)「不拡散に関するG8首脳声明」
      • 北朝鮮及びイランにおける核不拡散の課題への対処等
  3. 我が国の安全保障貿易管理制度の仕組み
     我が国の安全保障貿易管理制度は「外国為替及び外国貿易法」(外為法)で規制されており、貨物に関しては外為法第48条に、技術に関しては同第25条に規定されています。また貨物・技術ともに政令により、具体的に規制内容が定められており、貨物に関しては「輸出貿易管理令別表第1」に、技術に関しては「外国為替令別表」にそれぞれ定められております。また、平成14年4月からはキャッチオール規制が導入されました。
     安全保障貿易管理関連法令の全体の構造としては、「法律」、「政令」、「省令・告示」、「通達」、「お知らせ」よりなっており、これら全ての法令等の改正に注意を払い、常に最新の規制内容を確認することは、安全保障輸出管理を適格に実施するための大前提となります。法令の改正情報は「経済産業省安全保障貿易管理ホームページ」、「CISTEC総合データベース」等にも掲載されますのでご活用下さい。
    安全保障貿易管理制度の仕組み

     輸出貿易管理令別表第1、外為令別表ともに関連する兵器や貨物等のカテゴリーに応じ1-15の項に分類されており、各項番は先にご紹介した国際輸出管理レジームに対応しています。1から15の項による規制を「リスト規制」といいます。又、貨物・技術ともに16の項には貨物・技術のスペックという切り口ではなく、エンドユーザー・エンドユースという切り口で規制される「キャッチオール規制」の規制品目が定められています。
     

    (1)リスト規制について
     貨物の輸出と技術の提供において、規制される品目を規定している法令の構造は、次のようになります。

      法  律 政  令 省  令 通  達
    貨 物 外為法第48条 輸出令別表第1
    1~15の項
    貨物等省令
    1~14条
    運用通達
    技 術 外為法第25条 外為令別表
    1~15の項
    貨物等省令
    15~27条
    役務通達
        (品目を規定) (スペックを規定) (用語の解釈等)
         貨物について、輸出しようとする貨物が輸出令別表第1の1~15の項に該当する場合、提供しようとする技術が外為令・別表の1~15項に該当する場合には、経済産業大臣への許可申請が必要となります。リスト規制は国際的な合意に基づき、武器及び大量破壊兵器の開発等に用いられるおそれの高いものを規制しています。具体的には全地域を規制対象とし、規制対象となる品名や仕様(スペック)がリスト化されております。例えば、そのスペックに該当するものを自社のアメリカの子会社向けに輸出する場合についても必ず輸出等の許可が必要となります。

         このように、当該貨物・技術が輸出令別表第1の1~15の項に該当する場合、輸出する貨物、提供しようとする技術が輸出令別表第1並びに外為令・別表の1~15の項に該当するか否かの判定(該非判定)は、輸出管理の最も基本となる業務ですので、しっかりと該非判定を行う必要があります。スペック等を判定するための品目が全く無い場合は「対象外」となるわけですが、例えば、貨物によっては、その附属品や部分品まで規制の及んでいるものもありますし、また規制品目は法令用語で書かれており、一般的な商品名等ではないこと、貨物等の機能や材質、特性等の観点より規制がなされており、例えば輸出する貨物の名称がないからといって、安易に「対象外」と判断をしてはいけません。加えて一項番だけでなく複数の項番で規制されている場合もあります。従って、政省令のみならず解釈をも含めて規制の内容を注意深く読むことが必要です。その結果、もしスペック等を確認すべきものがあった場合、その項番に対応する判定帳票(項目別対比表、パラメータシート等)を選択し、漏れなく記入を行い該非を判定します。その結果、規制対象となる場合を「該当」、規制対象とならなかった場合を「非該当」と言います。


         *ご参考:貨物、技術に関する規制根拠

         貨 物(外為法第48条第1項)

         輸出者は、政令で定める特定貨物(物)を特定の地域に向けて輸出しようとする場合には、経済産業大臣の許可を受けなければならない。

         輸出令第1条第1項

         特定貨物(物)とは輸出令・別表第1に掲載されているものをいう。


         技 術(外為法第25条第1項等)

         居住者が非居住者との間で、政令で定める特定技術を特定の地域において、提供することを目的とする取引を行おうとする場合には、経済産業大臣の許可を受けなければならない。

         外為令 第17条第1項

         特定技術とは、特定の種類の貨物の設計、製造又は使用に係る技術であり、外為令別表に掲載されているものをいう。


        *技術の提供について

         貨物に関しては、日本から船積みし外国へ実際に貨物が輸出される場合に規制の対象となりますが、技術に関しては貨物の場合と異なり、外為法研修生を受け入れ技術指導を行ったり、技術資料を持ち出したり、商品のサンプルの海外送付に伴う技術資料を提供したり、様々な提供方法が考えられます。

    輸出と技術提供との違い


     技術を「居住者」から「非居住者」に「提供」する場合、規制の対象となるわけですが、「居住者」「非居住者」に関しては外為法第6条第1項第5号(居住者)および第6号(非居住者)に定義されており、さらに外為法第6条第2項により「外国為替法令の解釈及び運用について(蔵国第4672号)」の別紙6-1-5,6(居住性の判定基準)が示されています。

    参 考 居住者及び非居住者の判定


    財務省通達「外国為替法令の解釈及び運用について(抄)」より
     注意すべき点としては、技術の提供に関しては「日本にいる外国人」や「外国にいる日本人」に対する技術の提供に関しても規制の対象となる場合があると言うことです。技術は貨物と異なり、一度流出してしまったらそれを止めることは出来ません。貨物同様、的確な管理を行うことが重要です。

    (2)キャッチオール規制について

    1. (3)外為法に基づく輸出等の許可について
       規制に該当する物の輸出や技術の提供をする際には、事前に許可を取得する必要があります。
      1. 1)リスト規制に該当するか否かを確認
      2. 2)リスト規制に該当しない場合には、キャッチオール規制に該当するか否かを確認 (→用途や需要者に懸念があるか否かを確認)
        もし、リスト規制もしくはキャッチオール規制に該当した場合は経済産業省に許可の申請を行うことが必要となります。許可申請に当たっては通達等で定められた必要書類を用意し、この許可申請に対応する窓口(経済産業省又は経済産業局・通商事務所)に許可申請を行ってください。
      ※許可の申請方法は、以下の3つの方法があります。
      1. ①窓口への書類持参
      2. ②窓口あてに郵送
      3. ③電子申請
        また、許可の種類としては、個別案件毎に許可される「個別許可」と「包括許可」があり、該当貨物の輸出や該当技術の提供を行う場合には、輸出令等の特例や一部除外規定がある場合もありますが、原則いずれかの許可が必要となります。
       「包括許可」には、原則、国際輸出管理レジーム参加国を仕向地等として行う「一般包括許可」や実務でよく使われる「特別一般包括許可」、継続的な取引関係を有する同一の相手方への特定の物・技術の取引について一括して許可する「特定包括許可」、本邦において使用するために輸入された貨物であって、不具合による返品、修理または異品のためのみに輸出する輸出令別表第1の1項または外為令別表の1項に該当する物(武器)またはその物に内蔵された技術について一括して許可する「特別返品等包括許可」があります。「包括許可」に関しては適用できる品目や仕向地・提供地が「包括許可取扱要領」等にて細かく規定されていますので、包括許可にて輸出等を行う場合には、まず、需用者や用途を確認し、次に仕向地・提供地、包括許可が適用可能な貨物か技術であるかどうかを確認することが必要です。